赤い三角屋根の家

『赤い三角屋根の家』
うさぎのぴょんこが、道に雪だるまをいくつも並べて作りながら、遠くへ行ってしまった年の離れたお兄ちゃんが久しぶりに帰ってくるのを今か今かと待っていると、リリーンリリーン…ふいにどこからか、風の音に混じって聞いたことがない変わった音が聞こえてきました。
「なにかしら」
耳をぴんと立てて辺りを見回すと、ぼんやりと赤い三角屋根の小さな家が雪の中に建っているのが見えました。
「あんなところにおうちあったかしら」
近づいてみると、家の中で誰かがつっかえつっかえ演奏をしているのが聞こえました。聞いたことがある曲ですが何の曲か思い出せません。その曲はぴょんこにとって何か楽しい気分になる曲だったような…。ぴょんこは家の中が気になって、窓からそっと気付かれないように片目で覗いてみました。小さなこたつが見えました。それからこたつの上のたいやきが、ひれでオイデオイデとぴょんこに手まねきをしました。
身軽なぴょんこはおそるおそる窓に足をかけて中に入ってみました。部屋の中は暖かです。こたつに足を入れました。
魚たちはぴょんこが入ってきたことがうれしいようです。ぴょんこの周りをくるくると回りながら何か聞き覚えのある歌を歌っていますが、泳ぎながら歌っているので声が揺れてよく聞こえません。魚たちはりんごの笛の穴に顔をつっこんだり、トライアングルの三角の輪のとぎれた部分にわざと体をはさませたりして遊びながら泳いでいます。演奏の邪魔になりますがそこにいるみんな楽しそうにしています。
見ているうちにぴょんこはふと、笛を吹いているのは前にお兄ちゃんが送ってくれたあの爽やかなりんごで、トライアングルをたたいているのは夏のお祭りでお兄ちゃんと一緒に食べたフライドポテトかもしれない…と思えてきました。たいやきは…と眺めていたとき、1匹の魚が鈴の輪をくぐりながら口ずさんでいる歌がぴょんこの耳に届き、ハッと思い出しました。
「この歌はお兄ちゃんがときどき歌っていた歌だ」
お兄ちゃん、きっとそろそろ帰ってくる。
ぴょんこが
「ありがとう、さようなら」
と立ち上がろうとすると、こたつの中からもぞもぞと網を持った小さい人が現れて、
「ウン、マタネ。オニイチャンモウスグカエッテクルヨ」
と言いました。その声を後ろに風の中で聞きながら、ぴょんこは雪の中を駆けていきました。

お兄ちゃんのおみやげはまだ温かいたいやきでした。

次の日もその次の日も、ぴょんこはお兄ちゃんと遊んだりいろいろお手伝いをしたりして過ごし、その不思議な赤い三角屋根の家のことをすっかり忘れていました。それからずっとあとになって思い出し、赤い三角屋根の家を探しましたが、それっきり、どこにも見つかりませんでした。でもぴょんこは、確かあのとき風の中で「マタネ」と聞いたような気がして、きっといつかまたあのときぴょんこの体を温めてくれた、あの不思議な家に行けるような気がしています。

2023/02/24 19:14 | Comments(0) | イラスト

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