『プール』を描いているときに思ったこと
夏の間、取り掛かっていた仕事がひと段落し、また涼しい季節がやってきました。
涼しくなり、今年の始めの寒いときに引きこもって描いていた絵本『プール』のことを思い出しました。
まだ読まれていない方にいつか読んでいただくときのために、詳しい絵本の内容は書きませんが、(と言っても隠すほどの内容はなく、とてもシンプルなお話。ある夏の暑い日、男の子や動物たちがプールの中で賑やかに遊び、最後にちょっと何かあるだけです)暑い日、麦わら帽子を被った男の子が一本道をお散歩している。この坊や、名前がないので描いている最中に呼びかけにくく、勝手に「なつくん」と名付けました。文章は絵本作家の高部晴市さんです。描き始めた頃、高部さんに「なつくんと呼んでいます」とメールでお伝えすると、高部さんも「なつくんいいですね」と言ってくれました。高部さんも名付けそうな名前のような気もします。
描きながら、なつくんの気分になったり、一緒にプールで遊ぶ動物たちの気分になったりしながら描いていました。
でも一番「そうだなあ」と心に馴染んだのはプールの気分になっているときでした。
描いているうちに、自分がプールのように思えてきました。
プールの中に男の子や動物たちが入ってきて楽しく遊ぶことが、私の中にいろいろな人がやってきて出会うことと重なりました。
ちょうど妹が出産間際だったことも、とても影響しているように思います。
今まで知らなかった誰か(姪)が、どこからやってきたのか私のところにやってくる。妹のおなかの中のことばかり考えていました。
絵本の絵を描いているときはいつも(って、まだたいして描いていないけど)目の前の絵の世界に浸り、気持ちが内向きになってしまう。
プールという囲いが私の脳で、その中にある水が自分の意識のようにも思えてきました。
プールという境界を越えて頭の中にいろいろと入ってくるお話。

そんなこと読んでいる人にはまったく関係ないのですが…
2歳の甥も、おもしろいのかおもしろくないのかよくわからない真剣な表情で見ていました。

それからもう一つ思ったのが、もしかしたら動物たちなんか始めからいなくて、これは全部男の子の空想のお話なのかもしれないということでした。(ありふれた設定です。)男の子が少し大きめの水たまりを見つけてそこで一人で水遊びをしていただけかもしれない。帰り道も一人だし。全部男の子の想像のお話なのかも。男の子は帰ってから、おうちの人に今あった出来事を話すのかどうか。
自分で文章を書いたわけではないので、これはどういうつもりなのかなと描きながらいろいろと思いを巡らせてしまいます。

それからもう一つ浮かんだのは、子どもの頃実家にあった百科事典に載っていた小さな解説の絵です。
実家を探したら、まだ百科事典ありました。久しぶりに開いて懐かしかった。
【宇宙】という項目、「古代インドの宇宙観」、母が指差しながら説明してくれたのを妹と覗き込んで見ていました。「大昔のインドの人が考えていた宇宙っていうのはね…大きなヘビの上に大きなカメが乗っていて、大きなカメの上にゾウが何頭も乗っていて、ゾウがこの地面を支えていて、それで一番上に太陽が浮かんでいる…」動物がいろいろと出てきてみんなで作っている囲まれた世界が、なんとなく『プール』のお話に繋がりました。
出版社の方に原画を納品するとき高部さんにも来ていただきこれらの話をしたところ、高部さんは「そんなことまったく思っていなかった」と笑って聞いてくださいましたが、ホントのところはわかりません。
高部さんは滋賀県のガリ版伝承館というところで11月11日からガリ版の絵の展覧会をされるそうです。(土日のみ開館)11月23日にはガリ版の子どもワークショップもされるそうで、行けたら行ってみたいなと思っているのですが、どうかな。

2017/10/18 09:22 | Comments(0) | 絵本

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