先月の終わり、父の命日に日帰りで静岡に帰省しました。
夕方、静岡駅から上りの東海道線に乗りました。車内は空いています。先頭車両の二人掛けシートの運転席のすぐ隣りに座り、発車まで時間があったのでぼんやりしていると、向かいの席に、白とグレーが混ざったロングヘアをツインテールに結んだ全身レモンイエローの女性が座りました。コートも、床に付きそうな長いマフラーも、イヤリングもストッキングも全部薄い黄色…あの色が好きなんだな…。私は今は全身レモンイエローの格好はしていないけど、何か他人事とは思えないような、どことなく自分を見ているような気持ちで、見るともなく見ていました。
その人はシートに荷物を置いたまま立ち上がり窓の外を見ています。シートにはコートの黄色いケバケバが3箇所くらいくっついています。薄い黄色なのでシートに付いてもあまり目立ちません。
しばらくすると、キャップを被った小学3、4年生くらいの男の子が1人で乗ってきました。丸いぷくぷくぽちょぽちょとしたかわいらしい子で、リュックサックを背負って私のすぐ前に立ち、運転席を覗きました。電車が好きな子なのかな?私が座っているのが邪魔で運転席が見づらそうにしていたので、「運転席見ますか?」と言ってひとつずれて空けると、「あ、ありがとうございます」と言って隣りに座りました。それまでiPodで音楽(桑田佳祐)を聞いていたのですが、イヤホンをなんとなく耳から外してコートのポケットにしまうと、「ありがとうございます」ともう一度言われ、「いえいえ」と返しました。
男の子は運転席と自分の腕時計を交互に見ながら「もうすぐ発車…あと少し…」とつぶやいています。男の子の腕時計を覗き込むと、G-SHOCKが16時3分…。「電車好き?」と聞くと「あ、はい」。16時3分発予定の電車なのにまだ発車しません。「この時計進んでるのかなあ…」。時間を気にしている様子。私は時計をしていなかったので自分のスマホの画面をつけると16時2分、男の子がそれをチラッと見て「あ、まだ2分だ」…そして、発車。
すると男の子が「どこまで行くの?」と聞いてきました。電車好きそうな子だから、早く運転席の横のシートを独り占めしたいのかも。早く降りて欲しいなら申し訳ないと思いながら「あ、私、熱海(終点)まで行くんだ」。そして言い訳するように付け足して、「熱海で降りて、そこからまた乗り換えて、◯◯っていうところまで行くんだ。◯◯って知ってる?」「あああ…知ってる」「どこまで行くの?」「えっと、次で降りる、東静岡で」。あ、早く降りて欲しいわけじゃないんだ。ホッとして、「◯◯に住んでるんだけど、母…お母さんが静岡に住んでいて、それで静岡に行ってたの」「あぁ、じゃあちょくちょく行ってるんだ」「うん、そうそう…。1人で電車乗れてすごいね。もう冬休みだよね」「あぁ、うん、塾帰りで」「へぇ〜。何年生?」「6年生。もう、来年は中学生」。6年生か。読みが外れました。「じゃあ、受験とかするの?」「まぁ、一応…」「じゃあ、お正月とかあまり遊んだりできない?」「ん〜、まぁちょっとくらいは、遊んだり」「そうだよね。…がんばって。…でもあんまりムリしすぎないように…まぁ、どっちでも、大丈夫だよ。体が1番だから…“健康第一”で…」と、東静岡駅に到着。小学生に健康第一なんて、何か他に適した言葉がないのかと思ったけど出てこなかった。「じゃあ」と言うと、男の子は「じゃあ、またどこかで。ここで会うかもしれない」と、シートをちょんちょんと指しました。「うん、そうだね」。男の子はドアの前に立って開くのを待ちながら、振り返ってこちらを見ました。ドアが開く直前、何かもう一つしるしのような、取っ掛かりのようなものが欲しいと思い、「何君?」と聞くと「あ、◯◯◯です」「◯◯◯君…いい名前だね」「あ、ありがとうございます」。名付けた方の想いが感じられるような、名詞を名前にした名前でした。でも音だけ聞いてそう思ったけど、漢字で見たら違う意味かもしれない。
ドアが閉まり、電車が動き2、3秒すべり出したところで、男の子がホームに立ち止まって、こちらを見て手を振っていました。びっくりして私も思わず体を伸ばして手を振ると、向かいに座ったレモンイエローさんが私を見ました。
夕方、静岡駅から上りの東海道線に乗りました。車内は空いています。先頭車両の二人掛けシートの運転席のすぐ隣りに座り、発車まで時間があったのでぼんやりしていると、向かいの席に、白とグレーが混ざったロングヘアをツインテールに結んだ全身レモンイエローの女性が座りました。コートも、床に付きそうな長いマフラーも、イヤリングもストッキングも全部薄い黄色…あの色が好きなんだな…。私は今は全身レモンイエローの格好はしていないけど、何か他人事とは思えないような、どことなく自分を見ているような気持ちで、見るともなく見ていました。
その人はシートに荷物を置いたまま立ち上がり窓の外を見ています。シートにはコートの黄色いケバケバが3箇所くらいくっついています。薄い黄色なのでシートに付いてもあまり目立ちません。
しばらくすると、キャップを被った小学3、4年生くらいの男の子が1人で乗ってきました。丸いぷくぷくぽちょぽちょとしたかわいらしい子で、リュックサックを背負って私のすぐ前に立ち、運転席を覗きました。電車が好きな子なのかな?私が座っているのが邪魔で運転席が見づらそうにしていたので、「運転席見ますか?」と言ってひとつずれて空けると、「あ、ありがとうございます」と言って隣りに座りました。それまでiPodで音楽(桑田佳祐)を聞いていたのですが、イヤホンをなんとなく耳から外してコートのポケットにしまうと、「ありがとうございます」ともう一度言われ、「いえいえ」と返しました。
男の子は運転席と自分の腕時計を交互に見ながら「もうすぐ発車…あと少し…」とつぶやいています。男の子の腕時計を覗き込むと、G-SHOCKが16時3分…。「電車好き?」と聞くと「あ、はい」。16時3分発予定の電車なのにまだ発車しません。「この時計進んでるのかなあ…」。時間を気にしている様子。私は時計をしていなかったので自分のスマホの画面をつけると16時2分、男の子がそれをチラッと見て「あ、まだ2分だ」…そして、発車。
すると男の子が「どこまで行くの?」と聞いてきました。電車好きそうな子だから、早く運転席の横のシートを独り占めしたいのかも。早く降りて欲しいなら申し訳ないと思いながら「あ、私、熱海(終点)まで行くんだ」。そして言い訳するように付け足して、「熱海で降りて、そこからまた乗り換えて、◯◯っていうところまで行くんだ。◯◯って知ってる?」「あああ…知ってる」「どこまで行くの?」「えっと、次で降りる、東静岡で」。あ、早く降りて欲しいわけじゃないんだ。ホッとして、「◯◯に住んでるんだけど、母…お母さんが静岡に住んでいて、それで静岡に行ってたの」「あぁ、じゃあちょくちょく行ってるんだ」「うん、そうそう…。1人で電車乗れてすごいね。もう冬休みだよね」「あぁ、うん、塾帰りで」「へぇ〜。何年生?」「6年生。もう、来年は中学生」。6年生か。読みが外れました。「じゃあ、受験とかするの?」「まぁ、一応…」「じゃあ、お正月とかあまり遊んだりできない?」「ん〜、まぁちょっとくらいは、遊んだり」「そうだよね。…がんばって。…でもあんまりムリしすぎないように…まぁ、どっちでも、大丈夫だよ。体が1番だから…“健康第一”で…」と、東静岡駅に到着。小学生に健康第一なんて、何か他に適した言葉がないのかと思ったけど出てこなかった。「じゃあ」と言うと、男の子は「じゃあ、またどこかで。ここで会うかもしれない」と、シートをちょんちょんと指しました。「うん、そうだね」。男の子はドアの前に立って開くのを待ちながら、振り返ってこちらを見ました。ドアが開く直前、何かもう一つしるしのような、取っ掛かりのようなものが欲しいと思い、「何君?」と聞くと「あ、◯◯◯です」「◯◯◯君…いい名前だね」「あ、ありがとうございます」。名付けた方の想いが感じられるような、名詞を名前にした名前でした。でも音だけ聞いてそう思ったけど、漢字で見たら違う意味かもしれない。
ドアが閉まり、電車が動き2、3秒すべり出したところで、男の子がホームに立ち止まって、こちらを見て手を振っていました。びっくりして私も思わず体を伸ばして手を振ると、向かいに座ったレモンイエローさんが私を見ました。